「っ!!!い、痛いぞ・・・・」



幸村は苦い顔をしたが、は消毒液を付けた綿を遠慮無しに幸村の傷口に押し当てる。
暫く経ってから、は幸村の体に付いた傷を見て溜息混じりに幸村に愚痴を言うように呟く


「何も考えずに突っ込む幸村様が悪いのです。まったく・・・私達の身にもなってくださいね?」


「私達とは・・・佐助も入っているのか?」


「はい、いっつも突進してる幸村様を助けてくださってるんですから。・・・・突進してばっかじゃダメですよ?」


は最後だけあえて『私達』と言った。
私達とは自分と佐助の事で、いつも突っ込んでいく佐助を気遣っては『私達』と言ったのだった
それを聞いて、幸村は子供の様に意地を張って「わかっておる」とそっけなく言う。
そっけない返事が返って来たものだから、は少しムカついて、また幸村に消毒液が先程よりもたっぷりと付いた綿を押し付けた。
幸村はのムッとした顔に気付いたのか、身を案じて「わ、わかった!」と半分泣きかけでに言う
それを聞くと、は満足したように手を止めた。


「もう、終わりましたよ。あとは包帯を巻くだけです」



「ふ・・・ふぅ・・・、お前は鬼か?」



「幸村様が悪いんです。意地張るから・・・子供ですか?あなたは・・・・」



「某は子供では無いぞ!第一、の方が年下ではないのか?」



「年は関係ありません。やっている事が子供みたいなんですよ、幸村様は・・・」



「なっ!!」と言う幸村に気も留めずは小箱から包帯を取り出すと、は慣れた手つきで幸村の腕に巻き始めた。
幸村の左腕に包帯を巻き終えると、次は右腕。幸村はが包帯を巻きやすいように右腕を水平に上げる。
そんな細かい気遣いには「ありがとうございます」と、柔らかい笑みを見せる
幸村の方は少し照れくさかったのか、「別に良い」と頬を赤らめながらに言った。
そんな幸村の様子を見て(意地張ってるな・・・)と思いつつも、可愛らしいと思って少し微笑んだ。



「・・・・・終わりました。」




「ふぅ・・・礼を言うぞ。




「いえ、別によろしいんです」



そう言い残して、は立ち上がり一礼して幸村の部屋を去ろうとした。
しかし、幸村が立ち上がったの腕を掴んで帰るのを制す。
いつも冷静な顔つきなだったが、こんな事初めてで少し驚いたような顔をしている
は反射的に幸村の顔を見る、幸村はに視線を向けていた。
妙に真剣な顔で自分を見つめているものだから、は少し頬を赤らめたが、すぐに元の表情に戻る
いつもの様に落ち着いた声で幸村に言う




「なぜ引き止められたのでしょうか?」



「え・・・縁側で星でも見ないか・・・?」




突然の誘いで、は目を真ん丸くして幸村を見て驚いた。
暫くは驚いていたが、はあの冷静な顔からは想像できない程のふわっとした笑みを幸村に見せる
そんな不意の笑みにやられて、幸村は耳まで真っ赤になった。
幸村の様子に気付いていないは、微笑みを保ちながら優しい声で幸村に「いいですよ」と囁くように言う
幸村はから視線を逸らして「で、では行こう」と声を震わせながら言うと、立ち上がって
と二人並んで縁側へと出た。




縁側までくると、と幸村は寄り添うようにして星を見ていた。
夜空を彩る星を見詰めると幸村はどちらも星を瞳に写していて輝いていた。
少し経って、は呟くようにして



「・・・・キレイですね」





「ああ、縁側から見る星はとてもキレイだ・・・・」




「幸村様。人は死ぬと星になるんですよ」




「それは誠か?」



「死んだ母と父が言っていました」



そう言ったの横顔は少し切なく見えた。
幸村は只、何も言わず星を見詰めるの横顔をじっと見詰める。
は円らな瞳に星を写しながら話を続ける。


「私の母が私に星を見に連れてってくれてたんです。その時に母と父が・・・私に言ってた事です」








、死んだ人は輝ける星になれるのよ』




『じゃあ・・・・お父さんも星になったの?』




『そうよ、戦で死んでしまったけれど・・・あの人は今でも星になって生きているの』




『じゃあ、お父さんは・・・星になって私達を見守ってくれてるの?』




『そうよ。私達を見守ってくれてるの・・・』





_________、私もアナタをずっと見守っているから悲しんではダメよ・・・・・・・・
                  私は・・・・あの人と一緒に・・・あなたを見守っているから・・・・・




「戦に巻き込まれて、母は死んでしまったけれど。その後に幸村様に拾ってもらったんです」


少しシュンとした顔だったが、は幸村に視線を背けたままはにかんだ笑みを見せた。
無理に笑っていることは幸村にも分かっていた。
幸村はから視線を外し、と共にまた星を見詰める
幸村もと出会った事を思い出すと、懐かしむように話を始めた。



「泣いていたな・・・・は・・・・」



「ふふ、一生分の涙を使ってしまいました」




「・・・・・・・・・?」




「あら・・・・・・なぜ涙など流れるのでしょう・・・・・」




はすぐに涙を白くか細い指で拭き取ろうとしたが、幸村がの手首を掴み制す
いきなりの事では目を真ん丸くする。
幸村は勇気を振り絞った後、をギュッと抱きしめる。
はあの幸村が自分を抱きしめた事にビックリしていて、目を真ん丸くしたままで固まる
今のには普段の冷静さは無かった。




は泣くのを我慢しなくていい・・・・でも、某はの泣く姿を見るのは嫌だ・・・・・・
某は・・・を泣かさぬように、お館様と共に太平の世を作る____だから、・・・・・」




「私は、救急箱を持って。あなたの帰りを待っています・・・・だから・・・幸村様は・・・無事で帰ってきてください・・・」





溢れ出した感情は、涙となっての頬を伝っていった。






END





Madder.の茜谷すりさんから1000hit記念夢を強奪してきました。
幸村がとっても凛々しくて初々しくて素敵ですv
抱き締められたいっ!どうかその胸を貸して・・・!
すりさんありがとうございましたv 
06/08/10 壱師冴