「寒いー!」 この時期口ぐせとなった感のあるその一言と共には自分の身を抱くように縮こまった。 寒がりな彼女に厳しさを増した近頃の冷気は敵だ。 『俺様の身体で暖めてあげよっか〜?』 そんなお決まりの台詞が頭をよぎるものの口から出ることはない。 以前試しに言って、が風邪を引くすんでのところまで立ち尽くしていたのは記憶に新しい。 耳元まで真っ赤にしたはホントに可愛かった。うん。 しかし真田の旦那じゃあるまいし、あそこまで照れなくてもいいんじゃねぇか? 異性への耐性無さ過ぎだろ。つーか何もできなくなるまで固まるのは無しだって。 どれだけ邪な俺が自制心働かせたか知らねぇんだもんな〜。 そんな訳で変わりに口をつくのは「寒いねー。」なんていう在り来たりな返答。 ま、懐で温めてやれない代わりにとりあえず立ち位置を変え風除けになってみる。 敵はこの鋭い風。直接当たらなくなるだけで違うだろう。 ・・・少〜しはマシになったか? そう思ってを見たが生憎とまだ身を硬くしていた。 両腕を擦り、その後に掌を口元へと運んでは吐く息で指先を暖める。 震えてはいないが相当に寒いのだろう。 飽きる事無く何度も息を吐き出しては手を擦り合わせていた。 あらまー風除け程度じゃ駄目、か。・・・こりゃ奥の手使うしかねぇな。 「なぁ、手ぇ貸して。」 そうして唐突に切り出した言葉には戸惑って手を止めた。 「?」 頭には疑問符。俺の意図を読み取ろうとしているのかまじまじとこちらを見ている。 「いいから手ぇ出す。」 そう言って左手で俺が急かすとおずおずと右手を差し出してくれた。 ひやり。 その温度を表現するならまさしくそんな言葉。 重なった掌の冷たさに苦笑しつつ。 ぎゅっ。 俺はその手をしっかりと握った。 「佐助?」 突然の行為に今度は目を丸くした。頭には感嘆符ってところだ。 まったく予想通りの反応で嬉しい限り。 「これでちっとは温まるっしょ?」 そのまま手を引いて抱き止めたいのを(何とか)我慢して。 「でも俺もあんま手暖かくないし、早いとこ帰ろうぜ。」 歩き出せばこっちのもの。流れのままにの足も動きだした。 「・・・えっ!?」 放心気味な頭が数秒遅れで覚醒したがもう遅い。 少し強めに握る手もてこてこと進む足も彼女の硬直を阻止してくれている。 うん、よく考えた俺様。 「びみょ〜に暖かいし、こけないし良くなくない?」 「ええっ?は、恥ずかしいよ・・・」 上気し始めた頬でが訴えるがもちろん聞いてやらない。 「・・・は俺の事嫌い?」 「そんな事ない!」 顔は林檎のように赤く色づいちゃって実はもう言葉も発し難いほど照れてる癖に、 それだけはしっかり否定してくれるとこがまた愛しかったりする。 思わず浮かぶ笑みを隠せないまま「じゃあ問題なし。」と引く手の強さを増して。 鼓動まで聞こえてきそうなささらの緊張と初々しさを堪能しつつ帰路を辿る。 もう会話もなくなってしまったが、ほんのりと移ってく掌のぬくもり。 互いの想いも伝わるように心が温かく満たされていく。 ああ、これが幸せってやつなんだろうな。 恥ずかしがり屋な君と 遠回りしたくなる繋ぎ手 |
ささちゃんに相互感謝&素敵なイラストを頂いたお礼で捧げさせて頂きます! ”ほのぼの”というリクエストに答えられたか不安です(汗) でも自分の中で一番主人公が可愛いお話になった気がします。 もちろんイメージしたのはささちゃんですv勝手にごめんなさい。 ではではこれからもどうぞよろしくお願いしますvvv * * * * * * * 06/12/09 * * *
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